パキスタン / 干ばつ等対応防災力向上事業における持続的な技術移転の模索
パキスタンでは外務省NGO連携無償資金協力の助成を受け、南部シンド州において干ばつ対策の事業を実施しております。本事業では、特に自然災害リスク評価、リモートセンシング画像解析、地下水汚染調査・対策、井戸施工管理,水源維持管理,環境データ観測、水文地質等における技術移転を重要視していまして、パキスタン国内で災害リスクを見極め、効果的なソリューションを持続させることを目的としています。この技術研修においては今年初めにシンド農業大学と提携を結び、日本側の専門家による技術移転を現地関係者(行政機関、専門リサーチ機関、NGO等)に行うことに合意しました。具体的には、シンド農業大学で技術移転研修を行うこと、その際にシンド農業大学の施設や機材も活用すること、そしてシンド農業大学に将来的に本事業で取り扱っている技術を教えられる人材を、事業終了時までに養成することを想定しています。シンド農業大学は学生のみならず、外部に開かれた学術機関になることを意識していて、農業に関する様々なリサーチを実践にまで繋げられるよう、例えばウマルコート市内にアウトリーチ研究所なども設立し、積極的に外部との連携を展開しています。
この協力の第一ステップとして、防災研修をシリーズ化して実施しました。今回扱った主なトピックとしては地下水を理解する上で重要な水門地質学、電気探査、電気探査、電気の比抵抗差、電気探査における最新技術、地下水探査の方法、井戸の掘削状況の報告、地下水の流れ方の記録、QGISを用いたマップ作成等です。
例えば現地の地層情報は非常に限られているのですが、それを知ることによって、層状水、裂罅水の存在なども分かってきますし、安全な飲み水がどこから取れるのか、何故現在飲めない水と飲める水が出現しているのか、なども理解することが可能です。行政や現地農法研究所、大学やNGO等、様々なステークホルダーが干ばつ対策に関わっていますが、お互いの情報(例えばどの地点でどこまで掘ったらどんな地層が出てきなど)を効果的に共有し、そういった情報を広くオープンソース情報として提供出来れば、今後の地下水活用の効率性は飛躍的に上がります。
私達が対象としているシンド州ウマルコート付近はタール砂漠の西部に位置し、使用出来る水が大変限られています。何もない所から水を生み出すのは至難の業ですが、どこにどんな水があるか、それを持続的に活用する為にはどうしたら良いか、というサイエンスを現地コミュニティに伝えることによって、少しでも水不足が解消されると信じています。そういった技術移転をシンド農業大学との協働で行えることは一同大変嬉しく思っています。
CWS Japanは現地の人びとと同じ方向を向いて、その課題解決に向けて共に取り組んでいきます。こうした地道な活動の一歩一歩は、CWS Japanを支えてくれている支援者の皆様の後押しがあるからこそ歩み進むことがきます。引き続き温かい応援をどうぞよろしくお願いいたします。