よりよい支援とは? 国際基準はなぜできたか?

人道支援とは、紛争や自然災害などで社会基盤が崩れ、人としての生活が損なわれている人々が、援助を受けて尊厳ある生活を営み、その苦痛を軽減させるための活動です。

援助を必要としている人は、多くの場合、声を上げることができません。そこで行われる支援活動は、時に弱い人々に対する権力となり、苦痛を軽減しようとする意図と反して、さらに苦しみを与えてしまう危うさを持っています。

1940年代以降、ルワンダ大虐殺などで起きたことを教訓として、世界の多くの人道支援を行う団体は、その行動規範・指針を作成するようになりました。

少なくとも70以上あるとされる国際基準(2012年12月JSIによる調査)をリードする主に3つの基準について、CWSはアジア全体で積極的に活動に取り入れ、他団体へ促進する研修やワークショップなどの活動を行っています。

これらを、Quality and Accountability [支援の質と責任ある行動]への取り組みと呼んでいますが、これらに共通する考え方として、支援を受ける人の視点を重視する点があります。

3つの国際基準

スフィア・プロジェクト – 人道憲章と人道対応に関する最低基準 The Sphere Project [The Sphere Project – Humanitarian Charter and Minimum Standards in Humanitarian Response]

災害復旧時における良い行動事例を集める活動に端を発し、1997年に、人道支援を行うNGO、国際赤十字、赤新月社は正式に組織を設立し、災害支援における最低基準を策定することを目標に、スフィア・ハンドブックを完成させました。メンバー団体制ではなく認証制度もありません。広く人道支援者のために活動しています。被災者の尊厳ある生活への権利・人道支援を受ける権利・保護され安全が確保される権利の3原則から、様々な活動分野毎の技術的な最低基準まで書かれ、緊急・復旧時から平常時の防災計画まで、広く活用することが期待されています。

スフィア・プロジェクトのサイト[英語] http://www.sphereproject.org/
日本語のハンドブックがダンロードできます。 http://www.sphereproject.org/handbook/language-versions/
ネットでのトレーニングコースもあります。[英語] http://www.sphereproject.org/learning/e-learning-course/

HAP – 人道支援のアカウンタビリティと支援の質に関するHAP基準 [The Humanitarian Accountability Partnership –HAP Standard Accountability and Quality Management]

ルワンダ大虐殺以降、支援現場のクレーム調査・観察プロジェクトから始まり、調査と議論を重ね、アカウンタビリティ(責任ある行動)は、国際的自己監督組織によって強化できるという結論に至り、2003年14の人道支援団体に支持され、HAP [人道支援アカウンタビリティにおける連携] が正式に発足しました。アカウンタビリティの基準原則としての概念と、それを実行するための行動指針がまとまっています。メンバー団体制をとり、認証制度があります。緊急・復旧・復興~中長期に活用することが期待されています。

CWSパキスタン/アフガニスタンは、HAPの認定メンバーで副議長を務め、認定委員会のメンバーでもあり、CWSアジア地域の研修プログラムをサポートしています。

HAPのサイト[英語] http://www.hapinternational.org/

People in Aid – 人道支援組織のための人材マネジメント(管理/ケア/雇用/育成)の指針

ルワンダ大虐殺の時期、人道支援団体の人材管理・スタッフのサポートについて行われた調査プロジェクトに基づき、1995年に12団体が中心となり行動規範を策定しました。人道支援組織の人材管理の問題に関して中心的役割を担っています。メンバー団体制をとり、人材管理における行動規範の促進、組織が取り入れるためのツールの提供、人材育成を重視するそのプログラムでは認証制度を実施しています。資料の発行、ワークショップ・フォーラムの開催なども行っています。

CWSパキスタン/アフガニスタンとCWSアジア太平洋は、People in Aidのメンバーです。

People in Aidのサイト[英語] http://www.peopleinaid.org/

国際基準の動き / 使い方を見直す流れ

これらの国際基準は、世界のCSO(Civil Society Organization:市民社会組織) が初めてCSOの価値と活動基準を定めた「イスタンブール原則」を実際の活動に落としこむためのツールキットの中でも参照されています。

また上記3つの基準は、基準を使う人の理解を助け、使いやすさや認証制度のあり方、どのように多くの支援者に促進していくか、などを見直すための取り組み’Joint Standards Initiative (JSI)’を行っています。CWSパキスタン/アフガニスタンは、JSIの運営委員として、この取り組みに積極的に参加しています。

JSIのサイト[英語] http://www.jointstandards.org/