【フィリピン / 台風ライ被災者支援】被災者支援の現場から
2021年12月にフィリピン中部を襲った台風ライ(日本名:台風22号)は、「スーパー台風」と呼ばれるカテゴリー5となり甚大な被害をもたらしました。CWS Japanは現地パートナー団体のCDP (Centre for Disaster Preparedness)と共に、特に支援が届きにくいレイテ島南部で支援活動を実施しています。2022年5月中旬にCWS職員の五十嵐豪が現地を訪問しました。被災地での支援状況と、未だ被災の影響が残る被災者の声を報告いたします。
現地パートナー団体を通じて、現地行政や他の支援団体と調整の上、レイテ島南部の支援対象地域を選定しました。訪問中に、CWSの取り組みの一つである住宅再建支援として現金給付を実施しました。台風ライは多くの住宅に深刻な被害をもたらし、猛烈な強風により屋根が吹き飛ばされ、高潮により腰より上まで海水が浸水し、さらに押し流された家もありました。しかし、修繕に必要となる資材は世帯により異なることが多く、画一的な資材の提供よりも、世帯ごとに異なるニーズに併せて必要な資材を購入できる現金による給付は効果的な支援の方法だと言われています。また、業者による不当な価格設定や、輸送費の負担を避けるために、現地の業者と事前に十分に協議し、適切な価格で住民が必要な資材を購入できるように合意を交わしました。
また、支援を受け取った住民も現金を住宅再建に使用する旨の合意書に署名し、支援金の透明性と説明責任を担保しています。支援を受け取った多くの住民から感謝の言葉が伝えられました。一方で、今回の台風について「想定外だった」、「こんなに大きな台風になるとは思っていなかった」という声も多く聞きました。台風に慣れている地域だからこそ、油断した部分もあるという意見も挙がりました。
しかし、2013年に同じレイテ島の北部を襲ったスーパー台風ハイエンを思い出し、早めに避難した住民や、他の住民に早めの避難を促す人も多くいたようです。
フィリピンと日本は、同じアジア太平洋地域に位置しているだけでなく、台風や地震、火山など共通の自然災害リスクを有しています。そのため、お互いの被災経験や防災対策から学べることも多くあると感じました。今回訪問したレイテ島南部の各自治体では、災害マップや対応計画などがあったのですが、地域住民まで広く周知されているとは言えず、台風上陸前後の対応に遅れが見られました。
今後は行政が持っているこうした情報を、住民が自分ごととして意識を高めるような防災力強化支援が必要だと言えます。こうしたフィリピンの取り組みは、日本の市区町村における住民周知の取り組みや課題に活かせる部分があるのではないかと期待しています。