28 3月
  • By CWS JAPAN
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【新宿区多文化共生防災事業】日本語学校との新たな パートナーシップ: 防災ワークショップ

新型コロナウィルスが日本国内で感染拡大を見せ始めた頃、私たちはちょうど団体の活動の方向性・ビジョンを話し合っている時期でした。議論は何週間にもわたり、そのプロセスの中で、当初から取り組んでいた防災に多文化共生という価値観を掛け合わせるという新たな取り組みが産声を上げました。その後、全ての国内外の出張を中止した代わりに「今ここにいるわたしたちがやるべきこと」を考えたことによって、足元の地域ニーズに目を向けることができました。西早稲田に拠点を置きながらも全く地域のことも住民のことも分からず時を過ごしてきてしまった私たちにとって、それはゼロからの出発でした。

あれから2年の間、この取り組みのために4、50人(件)ほどの団体・個人に聞き取り調査を行ってきましたが、最も、苦労したのは地域、日本語学校との連携協力関係を築くことでした。地域関係者へのアプローチについては、新宿区社協から協力が得られ、また、今年度新宿区から本取り組みに対して助成いただいたことがブレークスルーになりました。その一方で、日本語学校との関係性づくりは非常にハードルが高く、何件電話してもアポさえも取り付けることができずにいました。

「なぜ日本語学校か?」新宿区では外国人居住者の割合が最も大きいのは留学生人口です。なぜなら、新宿区ではその留学生が通学する日本語学校が集まっており、私たちの活動対象地域である大久保・高田馬場周辺は都内で最も日本語学校が密集するエリアです。これらの地域の外国人をターゲットにするのであれば、日本語学校との協力関係は必要不可欠であること、また、留学生は非常に流動性が高く、地域とのつながりも作りにくい上に、災害経験ゼロ、防災知識・日本語力ともに有事に対応するには不十分であることが分かりました。日本語学校との関係性づくりに苦戦していた矢先、昨年から連携が始まっていたミャンマー人支援を行っているVEC(Villa Education Center)と協働した防災ワークショップがきっかけとなり、新大久保に住所を置く日本語学校(友ランゲージアカデミー、ミッドリーム日本語学校)繋がることができました。この2カ月に50名以上のアジアからの留学生や教職員を対象に出前防災ワークショップをオンラインと対面で開催することになりました。

私たちにとって悲願だった日本語学校との連携ですが、実際に開催してみて、あらためてニーズの高さを感じました。災害大国に暮らす日本人でさえも予測できない災害を自分事として考えることが、「まさか自分が被災すると思わなかった」というのが、多くの被災者から開口一番に出てくる言葉です。留学生の多くは震災、大規模災害未経験者が多く、日中は学校とアルバイト先を行き来し、自宅は夜寝に帰るだけという生活を送る彼らにとって近所づきあいや地域活動に参加できる余裕はありません。

そこで、私たちが企画する防災ワークショップでは、自助よりはむしろ、日本の公助のしくみや共助に軸足を置き、災害発生後に被災者がどのような境遇に置かれることになるのかを考えてもらうことにしました。中でも、実際に新宿区が発災時のために準備している「避難所生活のルール(多言語版)」「避難所登録カード」を教材にしたグループディスカッションでは、自分達が直面するだろう様々なお困りごとに気づきをもたらすことができました。印象的だったのは、どちらの日本語学校でも、避難所登録カードが自分の所属町内会の記入を求められることに困惑したことです。

災害は地域を襲い、避難所は地域の自治会によって運営されることになっており、外部からの支援も地域関係者との連携によって地域単位で行われます。被災して初めて自分達が居住する地元地域を意識させられ、地域を通さなければ必要な支援情報も物資も入手できない状況を知ってもらうことにより、平時から地域と顔が見える関係性を作る重要性を参加者に知ってもらうことをねらいとしています。すでに、地域との関係性を構築することに意欲的な日本語学校も現れており、その中間に、立つことができ、多文化共生型の地域防災体制づくりに一緒に取り組むことが私たちの次の目標です。