05 9月
  • By CWS JAPAN
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【パキスタン / 干ばつ等対応防災力向上事業】現場の取組を全国展開に繋げる

2019年より開始したパキスタン南東部のシンド州の乾燥地帯における防災力向上の支援は、当初3年を予定していた第1フェーズは、コロナ禍や国内外の政治経済の不安定化の影響を受けて延長を繰り返しましたが、いよいよ大詰めとなっています。この地域は、インド国境に近く、パキスタンの中でも特に開発の遅れた地域で、繰り返し干ばつの危機に見舞われています。

第1フェーズでは、乾燥地帯にある同国シンド州ウマルコート近隣の24の村に直接的な支援を行いました。具体的には、衛星写真や電気探査を使い地下水脈を特定し、太陽光発電を利用した揚水ポンプを備えた深井戸を各村に建設しました。これには、塩分濃度の高い地下水を飲料可能な水へと濾過する大型フィルターも備えられています。飲用可能な安全な水を、深井戸から安定的に確保できるようになり、干ばつに備えられるようになっただけでなく、普段の生活においても、遠く離れた場所まで水汲みにいかなければならない負担を軽減し、不衛生な水を使うことによる体調不良などの健康面での様々なリスクの軽減できました。

パキスタン 浄水フィルターを通した水は安全でおいしい

こうしたハード面の支援に加え、乾燥に強い農法や家庭菜園の研修、災害(特に干ばつ)に備える「防災」の啓発と各村における防災委員会の立ち上げ推進など、ソフト面においても、村人自身が主体的かつ持続可能に災害リスクを理解し、これを軽減できるように支援してきました。家庭菜園で作った野菜はオーガニックで健康的であるだけでなく、市場で買うよりも安価に入手できるため、浮いたお金を災害時に備えて貯蓄できただけでなく、子どもの教育のためにも利用できたという声もありました。

パキスタン 村人たちから支援の成果を聞き取るCWS Japan五十嵐職員

こうした「現場」における取り組みの成果が、シンド州の他の地域や、パキスタン全土に広がることを狙いとして、2022年8月19日に州都カラチでナショナル防災セミナーを開催しました。同セミナーには、日本からCWS Japanの職員が2名参加した他、現地パートナー団体のCommunity World Service Asia(CWSA)やパキスタン赤新月社などの支援団体、現地行政機関、シンド農業大学などの研究機関、在カラチ総領事館など、多くの方に参加いただきました。そこでは、これまでの支援の成果が発表されただけでなく、これまで集められた地下水のデータへのアクセスを容易にするネットワークの構築など、未来に向けた取り組みの課題なども幅広く話し合われました。

衛星を使った地下水分析についてセミナーで説明するCWS Japan小美野事務局長

CWS Japanは引き続き同地域における支援が定着し、他の地域にも波及するように取り組んで参ります。