04 1月
  • By CWS JAPAN
  • Cause in

田島 誠 様 | 特定非営利活動法人 環境エネルギー政策 研究所(ISEP)理事・特任研究員 / CWS Japan理事

1. CWS Japanを知ったきっかけはなんですか?

小美野剛さんに最初にお会いしたのは2011年の初頭、東日本大震災の震災支援絡みの懇親会だったと思います。当時の職員の伊藤洋子さんもご一緒でした。ネットワーキングや情報収集を兼ねてあらゆる集まりに軒並み参加していたのでどこの集まりだったか記憶していませんが(笑)。
当時私は日本国際協力NGOセンター(JANIC)の震災タスクフォースのリーダーを務めていましたが、その頃既にCWS JapanとはJANICの別部署が人道支援における被災者の人権(スフィア・スタンダードやHumanitarian Accountability Partnership(HAP)など)の啓発活動を一緒に始めていたと記憶しています。

JANICは国際協力に関わるNGOのネットワーク団体なので、現場での事業に関わった組織的な経験や人材、予算の全てがありませんでした。ある意味でゼロからのスタートでした。震災直後チームを立ち上げた時は私一人で、事業実施体制やネットワーク構築、資金調達に奔走していました。懇親会の席上、その窮状と今後の構想を話すと、驚くべき事に小美野さんからは即座に「いいですね。一緒にやりましょう!」という言葉が返ってきたのです。初対面で事業計画書を提示することもなくその場で協力の方向性が確定した瞬間でした。

2. CWS Japanと連携して良かったことはなんですか?

緊急期の流動的な状況でとても柔軟に協力してくれた点と、パートナーシップを重要視して伴走支援をしてくれた点です。
海外から名だたる国際協力NGOが震災支援に駆けつけましたが、海外からの人材受入に対する日本の門戸は高く、ほとんどの団体が資金協力のみに切り替えざるを得ませんでした。CWSもその中の一つでしたが、CWSが際立っていたのはその支援方針と理念でした。具体的には「パートナーシップ」と「伴走」、そして不確実な現実にも飛び込む「勇気」と「柔軟性」を持って、「必要とあれば何でもやる姿勢」でした。
実は、これらは国内であろうと海外であろうと緊急救援には欠かせない視点だと私は考えています。CWSは単に資金を提供するだけではなく、緊急期のプログラム形成を非常に柔軟にサポートしてくれました。私はこうしたCWSの理念に強く共感したことから、最も苦しいときに支えてくれた恩返しという意味も込めて2014年から理事としてCWS Japanが日本に根付くお手伝いをさせてもらってます。
スフィア・スタンダードの主流化等、インパクトが見えにくい分野や知名度の低い課題に対しては、対策が必要だと思われていても、なかなか資金が集まりにくい傾向がありますが、そのような分野に対して、資金を提供してくれたのがCWSでした。CWSはグローバルな視点を持ちつつ、持っているノウハウを日本に現地化するという視点も持っていました。支援が難しかった福島に早期に事務所を開設できたのもCWS Japanともう一つの国際NGOのおかげでした。

必要だけども誰も手をつけたがらない課題に取り組むことは容易ではありません。困難であるからこそ、取り組むことへの価値・意義を認識し、使命感を持って臨むことが重要だと私は考えています。私の原点は、19歳の時に飛び込んだカンボジア難民救援でした。当時のタイ=カンボジア国境には数十万人に及ぶカンボジアの避難民がいました。彼らはタイ国内の難民キャンプに入ることができず、地雷やマラリアの蔓延する国境地帯のジャングルに村を作って散在していました。ほとんどの支援団体は援助しやすい難民キャンプ中心の活動でしたが、私たちは支援が集中しているところや課題は他の団体に任せて、支援が行き届いていないところにアクセスすることを重視していました。困難を避けていたらいい仕事はできません。困難な状況であればあるほど支援を求めている度合いは高く、取り組まなければいけないという考え方は、CWSの支援の姿勢にも通ずるところがあると感じました。

3. 防災支援・緊急人道支援で大切にしているアプローチや課題を教えてください

大切なのは「最も支援を必要としている人たちにも最も効果的な支援を届ける」こと、そして「現状の専門性に縛られず、ニーズに応じてできることは選り好みせずに何でもまずやってみる」ことだと考えています。インドシナ難民救援当時からこの哲学は変わっていません。
また、外部者として現地の支援に関わる意義もあると感じています。革新的な課題の解決や改革を内部の人たちだけで起こすことはとても難しいと思います。内部では、様々なしがらみで突破口を見つけるのが難しかったり、必要なリソースがなかったりするからです。必要だけど誰も手をつけたがらない課題なら、なおさら難しい。そのような課題の解決には外部者のサポートが必要です。外部者の存在は、モラルサポートを提供し、事業を行う上で物的・知的リソースになり得ます。それは外部者だからこそできることなのです。


現在、私が関わっている再生可能エネルギーの分野でも、再エネの普及には3種類の人材が必要だと言われています。その3者とは、若者(若い力)、馬鹿者(一生懸命がむしゃらに向き合える人)、よそ者(外部者)です。これまでも複数の組織で事業を行ってきて、現地(内部)に良いカウンターパートがいることがインパクトの高い事業にするための必須条件だと感じています。その前提で、外部からいかに有効に支援するかが十分条件。内部のことは内部の人が一番よく知っているので、それは彼らに任せておけばいい。そのうえで、外部にいるからこそできることを見極める必要があります。目標に向けて内部の人が実現できるような武器を持てるように協力するのが、外部者の役割です。内部の人が課題解決に向けて突破口を見つけられるように外部者として協力するということも、CWS Japanが従来から重要視しているパートナーシップの哲学に共通すると思います。

4. CWS Japanへのアドバイスや今後に期待することはなんですか?

「成長を止めないでもらい、チャレンジを止めないでもらいたい」ということです。
組織も人間と同じで年をとればとるほど保守的になります。組織は安定を求めてリスクを取りたがらなくなります。チャレンジしなくなります。CWS Japanは、今は防災を主要な活動の軸として掲げていますが、未来永劫、防災だけをやっていかなければならないということではないと思います。世界のニーズは日々変化しています。支援が必要なら、相対的に見て他の組織より比較優位のある、しかし未開拓の分野にもリスクをとって踏み込んで、道を切り開いて行ってもらいたいと思います。
これからも、常に原点に立ち戻り、人々に何を求められているのか考えて、CWS Japanができること、やっていく必要があることに対して、勇気をもってチャレンジしていって欲しいと思います。