01 6月
  • By CWS JAPAN
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眞弓 孝之 様|国土防災技術株式会社事業本部国際部部長

1. CWS Japanを知ったきっかけはなんですか?

CWS Japanと関わるまでは、NGOとはほとんど関わりがありませんでした。防災という分野に携わっていますが、企業は最終的には利益を出すということを目的にしているため、NGOが持っている価値観とは異なると感じ、なかなか関わる接点がありませんでした。しかし当社にNGOでの勤務経験がある社員が入社してきて、NGOがどのように防災に取り組んでいるかということを伝えてくれました。最初はアルバイトでしたが、後に社員として定着し、私がNGOに関わるきっかけを作ってくれました。

2. CWS Japanと連携して良かったことはなんですか?

CWS Japanとの出会いは、まさに「目から鱗」でした。反省ではなく、猛省を強いられた思いでした。これまでの自分のキャリアでは、防災のコンサルタントであると自負して研鑽してきました。しかしCWS Japanと関わりNGOが目指している防災の考え方と私のそれが決定的に違っていたことに気付かされました。私はそれまで防災とは、なぜその災害が発生するのかのメカニズムを理解し、例えば砂防ダム・防波堤などを作り、地すべり・土石流などの災害事象の発生を防ぐ、またはその規模を軽減することが防災という考えでした。その中に「人」という存在はありませんでした。しかし、CWS Japanとともに防災に取り組むことになり、そこに「人」が介在しなければならないことに気が付きました。

今後も起こりうる災害において、全ての被害を完全に無くすことは非常に難しいと思います。しかし「人」が介在することによって、人の生命や身体への被害を軽減することはできます。防災というのは構造物・非構造物対策の両面で対応しなければいけないというに気がつくことができました。これは全ての防災に関わる人についていえることですが、構造物に対する安全神話に浸り切ったことになるのは恐ろしい。人々が、自然からの恩恵とともに脅威に晒されているという意識を持ち続け、それとどのように共存することができるかということを考えるのが防災だと感じました。CWSは地域レベルの能力強化だけでなく、政府・行政への政策提言やパートナーシップということに取り組んでいる。どれも「人」が防災の中心になっている。私が30年間見てこなかった視点を持っていました。今は、防災というのは皆さんと一緒に取り組むことで前に進んでいく分野であると思います。

3. 防災支援・緊急人道支援で大切にしている貴社のアプローチや課題を教えてください

あくまで個人の意見ですが、まず企業だから「支援」という考えがなかった。これまで「業務」としてこなしていた。プロジェクトの成果を達成することで、利益を得ることが目的でした。言い方を変えれば、「モノ」を作ることが支援でした。日本のコンサルタントが、日本の技術を用いて調査、設計し、日本の業者が施工で入ってモノを作ってきました。実際のところ、現地に資源も能力も様式も基準も無い中で、日本で整備されているインフラなど作ることはできません。ましてや、これのメンテナンスができるはずもありません。

こうしたことへの反省から、最近の政府の方針は「ものづくり」から「ひとづくり」にシフトしてきたように思います。その方針転換に際して、プロジェクトはマニュアル作り・ガイドライン作りにシフトしています。ただ、そこに書かれている技術は最先端のものです。また、こうした最先端の技術を現地も求めてくる傾向があります。なぜならそれは一見、楽そうに見えるからかもしれません。しかし、なぜこうした最先端技術を日本が維持できるかというと、それまでの歴史的経験や資源の積み重ねなど、これを下支えする土台があるからです。マニュアル作り・ガイドライン作りだけで、本当に正しい技術を伝えられているのだろうかと不安に感じることが度々あります。そうした時には、現地と向き合うのではなく、一緒に同じ方向を見るという姿勢を大切にしています。最先端技術を上からそのまま落とすのではなく、現地が理解できる言葉で、実施できる能力に応じた技術を提供するといったカスタマイズが必要だと思います。現地の人びとと一緒に歩み、解決に向けて一歩一歩近づいて行くことが「支援」ということなのだと感じています。

4. CWS Japanへのアドバイスや今後に期待することはなんですか?

次々と新しいテーマに取り組もうとする姿勢に期待しています。CWS Japanは、様々な分野の取り組みに防災をつなげて考えています。防災は自然との対話だと私は考えています。この地球で行儀よく住まう術が防災だと思っています。だからこそ、防災は色々な分野と関連付けて考えなければならないと思います。色々な活動に取り組むためには、CWS Japanが組織としてももっと大きく成長することに期待しています。