04 9月
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【九州北部豪雨災害2017】活動ストーリー 7

今回の災害から得られた教訓と課題

7月5日~6日にかけて九州北部地方で発生した豪雨は、同地方で50年に一度と言われた豪雨災害発生からわずか5年後のことでした。私が初めて被災現場に入った8月3日はまだ大量の流木が町中に散乱し、しかも、高速道路の料金所脇にもフェンスを隔てて住宅街の中に山積みになっていました。根がついたまま山から川を伝って流されてきた状態を見た時、ここで起きた土砂災害が、他の都道府県域でも十分起こり得るものだと感じました。日本の国土面積の6割以上が森林であり、そのほとんどがスギ・ヒノキの人工林であることを考えると、もはや九州地方だけの問題ではありません。

地元関係者、被災者の方々によれば、今回の豪雨災害は5年前の災害を上回る被害であること、流木が山から流出するほどの記録的短時間集中豪雨(7/5朝倉市内110mm/h:西日本新聞)であり、「これまでに経験したことのない大雨だった」と皆さん口々におっしゃっていました。この夏は、九州に続き、東北、九州南部、近畿、北陸地方が大雨に襲われました。着実に雨の降り方が変わってきているのでしょう。あまり考えたくはないですが、世界的に見ても、今後も異常気象による水害や土砂災害はどこにでも起きうる災害であることが予想されます。

今回の福岡・大分県にまたがって発生した豪雨災害による人的被害(死亡者・行方不明者)は両県で計50名ほどになりました。(朝倉市・日田市役所HP、東峰村役場)この度の私の任務は、九州キリスト災害支援センターが行う緊急支援に協力するのと同時に、今回の災害による人的被害の原因や教訓・課題等について調査することでした。そこで、①市役所・村役場の防災や林政関連担当部署、②森林組合、③自治会長(区長)、④地域コミュニティ協議会事務局、⑤支援団体関係者、⑥地域住民および被災者などに聞き取りを行ったところ、先ず、人的被害の原因については、次のようなお話でした:1)5年前の豪雨災害を経験したことで逆に油断して、避難が遅れた、2)短時間に記録的な降雨量だったため、避難所に向かうこと自体が危険になった、3)夜になり、外出することが危険になった、4)足が不自由な高齢者が家族にいたので、助けは来たが避難しなかった、5)防災行政無線も各戸に配置された受信機からも放送が聞こえなかった・作動しなかった、6)平屋家屋のため、逃げ場がなかった、7)指定避難所が自宅から遠すぎて歩いて行けない、8)避難指示が出たのが遅すぎた。

第二に人的被害を免れた理由として、最も多かったのが、床上浸水が始まる前に家屋の2階に避難したことでした。それ以外に、高台(山のお堂)に逃げて助かった例もありましたが、これにはリスクが伴います。既存の行政区の中は、地形が多様で、山間部では、かなり広範囲に住宅が散在しているため、ちょっとした高さや位置の違いから家が流されることになりました。そういうことから、最終的には、適切な個人の判断が最も重要になりました。

最後に今後の対策として、地域住民側から聞かれた意見として、1)避難指示が出たらすぐに避難、2)避難のタイミングを様々なレベルで判断(例:各世帯-隣組-各区など)、3)地区内の要支援者・支援者リスト作成・更新と全世帯の携帯番号把握の徹底、4)自主防災マップの改善などが挙げられました。住民一人ひとりの防災意識向上の必要性については、皆さん感じておられるようでしたが、では、そのリーダーシップは誰がとるのでしょうか?各地区に自主防災組織は存在していることになっており、各区長さんが会長になってはいるのですが、区長職は2年の任期制です。区長さんの関心度や力量によって、組織や活動の質も左右されるので、機能的で持続可能な自主防災組織をどのようにして形成していくのかが課題になります。今後の防災対策について、どの市町村も目の前の復旧で頭がいっぱいで、今回の災害の検証も防災対策についても検討していないと言われました。今後、被災地が復興期に入っていく中で次の災害に備えるためには、ハード面よりもむしろソフト面での強力なリーダーシップが求められていくと考えます。

各戸に配置されている防災無線受信機