01 9月
  • By CWS JAPAN
  • Cause in

【九州北部豪雨災害2017】活動ストーリー 6

被災現場に入る支援者の姿勢

被災現場には、日々、外部から大勢の人々が訪れます。その数も分野も緊急時であればなおさらです。現在、応援に入っている九州キリスト災害支援センターでは、新しいボランティアが到着する度に、現場に入る前にブリーフィングを行います。その中の一つとして、写真の撮り方について注意をしています。昨今のSNSの普及により、ボランティアの中には一種観光気分で作業に入り、被災したお宅の前でVサインで写真を撮って帰るような人も過去にいたのかもしれません。これは、被災者に対する配慮の欠如と言えるでしょう。

東林田地区に作業に入った初日、公民館の玄関に貼り出された1枚の貼り紙が目に留まりました。それは、メディア関係者に対するお願い文でした。『住民の方も大変疲弊しております~途中省略~住民の方の気持ちを汲み取った配慮で取材をお願い致します。』お話を聞かせて下さった区長さんの中には、被災現場で自分の写真を撮られ、自分が言ってもいないコメントを付けられたので新聞社にクレームしたという方もおられました。その一方では、取材だけでは帰らず、1日一緒に作業していった新聞記者もいたそうです。

被災現場で情報収集をしているのはメディア関係者だけではありません。支援団体関係者も発災後、現場に入ってニーズ調査をしています。私も1カ月の滞在中に防災という観点から今回の災害を検証し、今後の対策を考えるための聞き取り調査をしました。発災して1カ月余りが過ぎても避難生活を続けながら自宅の復旧作業に追われる地域の皆さんからお話を聞くのは大変気を遣いました。最も避けたかったことは、自分は何も提供せず、相手には何のメリットもないのに、調査する側の論理で被災者から情報を搾取するような行為です。

支援者と被災者とは自ずと「支援を与える側‐受ける側」の上下関係が成立してしまいます。私の経験上、緊急支援は特にその傾向が強くなると思います。緊急支援では軍隊的な(上意下達の)組織の方が機能的です。現場のリーダーをリスペクトすることは必要ですが、気持ちの上では対等でありたいと、どの立場になっても思います。作業に入ると、特に高齢者の方々は「こんなにしてもらって申し訳ない」と何度も何度も私たちにおっしゃいます。長引く避難所生活で健康を害していても、病院にも行かず、作業に付き合おうとされます。だからこそ支援者は、姿勢を低くして、被災者のお宅に作業に入らせていただくという謙虚な気持ちを持ちたいものです。

これまで私の立ち位置は支援者というよりはフィールドワーカーであり、地域の皆さん、一緒に作業に入るチームメンバーとも対等な関係性を保ちたいと常に考えてきました。それは、国内も海外フィールドも同じです。また、現場のリアリティと真のニーズを知るためには、被災者の方々から信頼を得るための時間を惜しまないことだと思っています。今回、1カ月間、傍観者ではなく、作業現場に入らせていただいたことは、地域の方々とそのような関係性を構築するのに大変役立ちました。

先日、浜川地区の区長夫人から、今回被害が大きかった松末地区に聞き取り調査で入るのはやめた方がいいと止められました。それ以来忘れていたのですが、区長夫人から松末地区コミュニティ協議会事務局の方に話を通したからという電話がありました。一度はあきらめていたのですが、思いがけない気遣いに驚きと感謝の気持ちが溢れました。