04 1月
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ショウ ラジブ様|慶應義塾大学 政策・メディア研究科 教授 /CWS Japan 理事長

1. CWS Japanを知ったきっかけはなんですか?

2007~2008年頃に京都大学に勤務している時に、現在は国連防災機関(UNDRR)で、当時の国連国際防災戦略(UNISDR)の活動の一環として、災害リスク軽減に関連する伝統的な知識・知恵についてまとめることになり、世界各地の事例を公募したところ、パキスタンの地すべり対策事例を、当時CWSのパキスタン事務所に勤めていた小美野さん(現CWS Japan事務局長)が執筆したことから、CWSのことを初めて知りました。現地の人々の独自の対策や知恵などが非常に興味深く書かれていたのを覚えています。出版物の中にもその事例を入れるべく、発表のために京都に小美野さんを招き、そこで直接会いました。
その後、私が理事として関わっているSEEDS AsiaとCWSとの連携を経て、2015年から理事としてCWS Japanに関わるようになりました。

2. CWS Japanと連携して良かったことはなんですか?

CWS Japanが日本で設立する以前から、CWSと協働して事業を実施する機会がありました。2008年にミャンマーでサイクロン・ナルギスが発生した時です。私はSEEDS Asiaの理事として、なにか支援活動ができないかと思い、発災から数か月後に現地訪問しました。そこで、Mobile Knowledge Resource Center(MKRC)という防災啓発のための移動式防災教室を支援として行うことを考えました。トラックを購入して、地震、土砂崩れ、洪水の仕組みが理解できるような簡易的な模型を導入し、学校や村を行き来するという防災啓発プロジェクトです。当時CWSのバンコク事務所にいた小美野さんと一晩中、このアイディアについて語り合いました。気づいたら朝
の3時や4時になっていました。小美野さんとご飯に行くと大抵このスケジュールになります(笑)。

この移動式防災教室という事業の実現のためにパートナーとして資金提供や企画をサポートしてくれたのが、CWSでした。支援活動の現場に当時のミャンマー政府の大統領が視察しに来るなど、ミャンマー国内でも注目される事業となりました。その後も、水上での移動も可能にし(Water Knowledge Resource Center: WKRC))、陸の移動はトラックで、水上ではボートでと使い分け、ミャンマー全土の学校やコミュニティの間で防災教育を推進していきました。CWSのネットワークを活かして、パキスタンのカラチでもMKRCを実施しました。最終的にこれらの移動式防災教室の運営は現地のパートナーに移転されていて、継続されています。他にも2011年に起きた東日本大震災の際に、これまでの連携の経験を活かして、SEEDS Asia、京都大学、そしてCWSの三者で連携して気仙沼、釜石、名取で2011年から5年間支援活動を実施しました。
これらのパートナーシップ連携を通して感じるのは、限られたリソースで有効な支援ができたということです。公的機関による援助にはないような柔軟性があっただけでなく、支援内容を熟考することに時間と労力を注げたことで、インパクトの高い事業の設計ができました。

理事として組織内部から関わっていき、見えてきたのは、CWS Japanは他のアクターの手が届いていない支援のギャップを埋めるために奔走している組織であり、最も脆弱で最も支援を必要としている人に手を差しのべる努力をしている団体であるということです。このような軸をもっと明確にし、強化し、効果的にリソースの投入をしていってほしいと思います。

3. 防災支援・緊急人道支援で大切にしているアプローチや課題を教えてください

まずは現地のニーズに耳を傾けることが重要だということです。それをなくして支援計画を全部固めていかない方がいいと思っています。聞き取った全てのニーズを漏れなく対応することはできませんが、聞き取った数々の現場のニーズと組織のミッションやマンデートとの適切なマッチングをすることが大切です。

4. CWS Japanへのアドバイスや今後に期待することはなんですか?

期待することはたくさんありますが、そのなかでも主に3つあります。まず一つは、大勢がやっていることに追随するのではなく、CWS Japanの団体としてのユニークな強みを、理事を含め組織全体で理解し、認知することです。CWS Japanは最も脆弱な人の支援に奔走している団体で、それを誇りに思うことです。

そのうえで、二点目としては、専門性の高いアウトプットやインパクトを出せるように、組織として効果的にリソースの投入をしていってほしいと思います。昨今、防災の取り組みはダイナミックに変わってきています。コミュニティベースの活動でも、コミュニティとの連携の方法、コミュニティ・マネジメント、コミュニティ内の意思決定のプロセスの分析、コミュニティと自治体や行政との連携などいろんな観点でノウハウの蓄積や専門性が求められていると感じています。

最後は、教訓の抽出・記録し、発信する活動を継続していくということです。教訓の抽出と発信は今後も重要な活動になると考えています。災害のリスクや課題は一つ一つがユニークで、多様である分、課題解決の方法も多様になります。そのような貴重な教訓や経験を持っているのに、それを発信できるキャパシティーのある組織が限定的であるなかで、CWS Japanがこの活動を率先してやっていることは意義があり、継続していってほしいと思います。